〜月刊・魔法の藤本陽一〜

  
5月のお題・音楽にコツはあるか? 果たして、音楽に、殊にライブに関して、コツはあるのでしょうか? ライブパフォーマンスのノウハウとしては経験を積んだ人からアドバイスを貰ったり、自身でも経験を積むとコツのようなものが掴めると思いますが、実は「コツのようなもの」はあっても、「コツ」は何もありません。もし、コツを見つけたと思ったら、表現者生命としては終わりだと思います。 何故かと言うと、何事も例外というものはあって、コツは例外には通用しないからです。 今度の5月5日に、僕は『大耳ライブ』という企画に出演します。もう、7年ほど出演していますが、毎回「今回は上手くやれるだろうか?」という疑問と不安に満ち満ちています。尚且つ今年は、今までやっていたライブハウスが閉店し、場所を変えて行われるため、ますます読めない状況にあるのです。 言わば、これが例外のようなものです。しかし、表現とは言うなれば事務作業とは違ってコツで上手くなるものではなく、むしろ例外に次ぐ例外に揉まれて試行錯誤の上に成り立つものなのでしょう。ある意味一か八かです。そして、例外に出会うことは新しい自分に出会うことにもなるでしょう。 しかし、この「新しい自分に出会う」時に、お客さんにウケると何とも言えない快感に襲われるのです。これが表現を止められない理由です。 どんなライブの時でも「これをやっておけばOK〜っ♪」ということはありません。 ただ、一つ心がけていることがあります。 デヴィッド・ボウイが、最後のツアーで「世界を売った男」という曲を紹介した時に、お客さんから大歓声を受けます。あまりの大歓声にデヴィッド・ボウイは歌う前に「Thank You.」と言います。 この映像を観て以来、僕は「こんばんわー」に対して「こんばんわー」が返ってきたら必ず「ありがとうございます」を言うように心がけています。しかし、これも「言っておけばOK〜っ♪」ではダメです。お客さんに伝わります。なので、出来るだけ心を込めて、本心から言うようにします。この「こんばんわー」も、毎回例外だと思ってやらないといけません。 つまり、ライブとは例外の連続でありコツはない、ということになります。 そして、毎回必ず忘れてはならないことは−当たり前の表現になりますが−心を込める、結局この一言に尽きるのですが、この一言にはとても多くのことが含まれているのです。

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